2026/08/18

豊島区の実家を相続したものの、住む予定がなく、手続きと税金の見通しが立たないまま時間だけが過ぎている。その状態から抜け出す近道は、制度ごとに異なる期限を洗い出したうえで売却計画を組み立てることにあります。相続不動産には、相続登記、取得費加算の特例、空き家の3,000万円特別控除など、起算点も満了日も異なる期限が並走しているためです。相続登記は不動産を取得したことを知った日から3年以内、取得費加算は相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで、空き家特例は相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。相続開始日だけでなく、取得を知った日、相続税の申告期限、売却する年を確認して逆算する必要があります。
この記事では、豊島区池袋本町で昭和59年の創業以来、地域の不動産売買に携わってきた和幸株式会社が、相続した実家を売却するまでの手順、税金と費用の内訳、負担を抑える特例までを整理して解説します。
目次
6. まとめ
相続した実家に住む予定がないなら、早い段階で方向性を固めたほうが選択肢を広く保てます。保有し続ける限り税金と維持費が発生し、建物の状態も時間とともに変化していくためです。
誰も住まない家を持ち続けると、目に見えにくい出費が積み上がります。固定資産税・都市計画税に加え、火災保険料や最低限の管理費用が毎年かかるためです。
| 主な項目 | 金額を左右する要素 |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 固定資産税評価額、土地面積、住宅用地の特例の適用有無 |
| 火災保険・地震保険 | 建物の構造や状態、補償範囲、空き家としての契約条件 |
| 管理・巡回の委託費 | 巡回頻度、庭木や建物の状態、委託する作業の範囲 |
※表は左右にスクロールして確認することができます。
金額は物件ごとに大きく異なるため、納税通知書、保険契約書、管理会社の見積書を突き合わせて年間の負担額を算出してください。
もうひとつ注意したいのが、空家等対策の推進に関する特別措置法にもとづく行政の関与です。「特定空家等」または「管理不全空家等」に該当し、賦課期日である1月1日までに区からの勧告に対する必要な措置が講じられない場合、その敷地は住宅用地に係る課税標準の特例の適用対象から除外されます。小規模住宅用地では固定資産税の課税標準が価格の6分の1(都市計画税は3分の1)となる特例があるものの、負担調整措置などが影響するため、税額が一律に6倍へ跳ね上がるわけではありません。
✓ポイント:維持費は毎年出ていくお金であるのに対し、売却は一度の手続きで負担を断ち切れる選択肢になります。まずは納税通知書と保険証券を手元に集め、年間いくら出ているかを数字で把握するところから始めると、保有と売却の比較がしやすくなります。
出典:「特定空家等」または「管理不全空家等」に該当すると土地に対する固定資産税・都市計画税の税額が高くなる場合があります。|東京都主税局
豊島区は、近年の地価動向を見る限り、相続物件の売却を検討しやすい環境にあります。池袋を中心とした交通利便性と再開発の進行を背景に、住宅地の地価が上昇基調で推移しているためです。東京都が公表した令和8年地価公示では、豊島区の住宅地の平均価格は1㎡当たり91万2,100円、平均変動率は前年比12.9%でした。
ただし公示地価はあくまで標準地の指標であり、個別の実家の売却価格を保証するものではありません。実際の価格は接道状況、土地の形状や面積、建物の状態によって上下します。
建物についても、一般には築年数の経過や管理状態の悪化にともなって評価が下がりやすくなります。もっとも、耐震性、修繕やリフォームの履歴、立地、買主の利用目的によって評価は変わるため、「古いから価値がない」と決めつける必要はありません。売却の可否や時期は、地価の動きと建物の個別事情の両方を見て判断することになります。
相続した不動産の売却は、5つの段階を順番に踏んで進みます。買主への所有権移転登記を行うまでに名義を相続人へ移す必要があり、通常の売却にはない工程が挟まるためです。
| ステップ | 内容 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 1 | 遺言書の確認・相続人の確定 | 2週間〜1か月 |
| 2 | 遺産分割協議・協議書の作成 | 1〜3か月 |
| 3 | 相続登記(名義変更) | 2週間〜1か月 |
| 4 | 査定・媒介契約・売却活動 | 1〜6か月 |
| 5 | 売買契約・引き渡し | 1〜2か月 |
※表は左右にスクロールして確認することができます。
最初に行うのは遺言書の有無の確認と相続人の特定です。遺言書があればその内容が優先され、なければ相続人全員の協議で分け方を決めます。
自宅保管の自筆遺言書は、開封前に家庭裁判所の検認が必要です(公正証書遺言や法務局の保管制度を使ったものは不要)。あわせて被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本をたどり、法定相続人を洗い出します。相続人が1人でも欠けた遺産分割協議は無効となるため、この確認は省略できません。
相続人が確定したら、誰が実家を取得するかを話し合いで決め、合意内容を遺産分割協議書にまとめて全員が署名・押印します。売却を前提とする場合、分け方には主に次の方法があります。
✓ポイント:換価の便宜上、代表者1人の名義で相続登記をする方法もあります。ただし、単に1人が取得した形にしてしまうと、他の相続人への送金が贈与と判断されるおそれがあります。遺産分割協議書に換価分割であることと代金の分配方法を明記し、合意どおりに分配することが前提です。登記の方法や協議書の文言は、司法書士や税理士に確認しておくと安全です。
売却の前提となるのが相続登記です。2024年4月1日から申請が義務化され、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に登記をしなければならず、正当な理由なく怠れば10万円以下の過料の対象になります。2024年4月1日より前に相続したことを知った不動産で登記が未了のものも義務化の対象で、こちらは2027年3月31日が期限です。
なお、相続登記が完了していない段階で条件を整えて売買契約を結ぶ場合はありますが、買主への所有権移転登記を行うまでには相続登記を終えておく必要があります。豊島区内の不動産登記を管轄するのは東京法務局豊島出張所です。申請には遺産分割協議書、戸籍謄本一式、住民票、固定資産評価証明書などが必要で、書類収集に手間がかかることから司法書士へ依頼するケースが多く見られます。
名義変更の見通しが立った段階で査定を依頼します。相続物件は築年数が古いことが多く、現況で売り出すか解体するかで戦略が分かれるため、地域の取引事例を把握した会社の見立てが欠かせません。査定額の根拠、想定される購入者層、成約までの期間の見込みを説明できるかどうかが、会社を見極める材料になります。
条件が整えば売買契約を締結します。契約時に手付金を受け取り、後日の決済で残代金の受領と所有権移転登記、鍵の引き渡しを同時に行う流れです。引き渡しまでに家財の撤去とライフラインの精算を済ませておきます。売却益が出た場合は翌年2月16日から3月15日までに確定申告が必要で、特例の適用にも申告が要件となります。
売却で受け取る金額がそのまま残るわけではありません。税金と諸費用を差し引いた額が実質的な手取りとなるため、内訳を先に把握しておくと資金計画を立てやすくなります。
売却で利益が出たときに課税されるのが譲渡所得税と住民税です。譲渡所得は「売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)」で計算し、税率は所有期間によって変わります。
| 区分 | 所有期間 | 所得税(復興特別所得税含む) | 住民税 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30.63% | 9% | 39.63% |
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 15.315% | 5% | 20.315% |
※表は左右にスクロールして確認することができます。
ここで押さえておきたいのが判定の基準日です。長期・短期の判定は、売却日ではなく、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうかで行います。相続で取得した不動産は被相続人の取得の時期がそのまま引き継がれるため、親が長く所有していた実家なら、相続直後に売っても長期譲渡所得として扱われます。
取得費が分からない場合は、売却代金の5%相当額を概算取得費として用いることができます。ただし、これは強制ではありません。購入時の契約書が見つからなくても、通帳、住宅ローンの資料、登記関係書類などから実額を立証できる可能性はあります。なお建物の取得費は、購入代金などから減価償却費相当額を差し引いて計算します。
出典:No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期|国税庁
手続きそのものにかかる税金もあります。相続登記の登録免許税は、原則として固定資産税評価額の0.4%です。ただし、一定の土地や数次相続に関する登記には2027年3月31日までの免税措置が設けられています。
売買契約書に貼る印紙税は契約金額に応じて決まり、2027年3月31日までに作成される契約書には軽減税率が適用されます。
| 契約金額 | 軽減後の税額 |
|---|---|
| 500万円超1,000万円以下 | 5,000円 |
| 1,000万円超5,000万円以下 | 1万円 |
| 5,000万円超1億円以下 | 3万円 |
| 1億円超5億円以下 | 6万円 |
※表は左右にスクロールして確認することができます。
出典:No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置|国税庁
仲介で売却した場合、成約時に仲介手数料が発生します。売買価格が400万円を超える場合、依頼者の一方から受領できる通常の上限額は「売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税」で計算でき、3,000万円で成約すれば105万6,000円が上限です。
ただし例外があります。2024年7月1日以降、価格800万円以下の宅地・建物(低廉な空家等)の売買仲介については、あらかじめの合意を前提に、税込33万円を上限として通常の上限を超える手数料を受領できる特例が設けられました。相続した築古の戸建てはこの価格帯に入ることもあるため、媒介契約を結ぶ前に手数料の額を確認しておく必要があります。
このほか、物件の状況に応じて司法書士報酬、解体費用、測量・境界確定費用、遺品整理や残置物の処分費用などが加わります。いずれも接道状況、重機の進入可否、隣接地の数、荷物量といった条件で金額が大きく変わるため、一般的な相場ではなく個別の見積もりで判断してください。
✓ポイント:諸費用は物件の条件しだいで100万円単位の差が出ます。査定の段階で費用の内訳と手取り額の試算まで出してもらえば、売却価格の比較だけで会社を決めて想定外の出費に驚く事態を避けられます。
譲渡所得が出ても、要件を満たせば税負担は軽くなります。相続不動産の流通を促す目的で、期限付きの特例が複数用意されているためです。ただし要件は細かく、知らないまま売却時期を逃すと使えなくなります。
| 特例 | 主な効果 | 期限 |
|---|---|---|
| 取得費加算の特例 | 支払った相続税の一部を取得費に加算 | 相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで |
| 空き家の3,000万円特別控除 | 譲渡所得から最大3,000万円を控除 | 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日 |
| マイホームの3,000万円特別控除 | 譲渡所得から最大3,000万円を控除 | 居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日 |
※表は左右にスクロールして確認することができます。
なお、空き家の3,000万円特別控除と取得費加算の特例は、同じ不動産の売却について併用できません。どちらが有利かは相続税額、取得費、売却益によって変わるため、売買契約を結ぶ前に税理士へ確認してください。
相続税を納めた人が使えるのが取得費加算の特例です。売却した不動産に対応する相続税額を取得費に上乗せできるため、譲渡所得そのものが圧縮されます。
条件は、相続または遺贈で財産を取得して相続税が課税されていること、そして相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売却すること。相続税の申告期限が相続開始を知った日の翌日から10か月以内であることから、一般には相続開始から約3年10か月が目安になります。相続税がかからなかった場合は対象外です。
相続した実家を売る際に効果が大きいのが、通称「空き家特例」と呼ばれる特別控除です。譲渡所得から最大3,000万円を差し引けるため、控除後の譲渡所得がゼロとなり、譲渡所得に対する税額が生じない場合もあります。主な要件は次のとおりです。
2024年1月1日以後の譲渡からは、買主が引き渡し後、譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修または取り壊しを行った場合も対象に加わりました。あわせて相続人が3人以上いる場合の控除額は1人あたり2,000万円へ変更。適用期限は2027年12月31日までです。
上記は主な要件にすぎません。被相続人が老人ホーム等へ入所していた場合の取り扱い、親子や夫婦など特別な関係にある人への売却の制限、共有や分割売却における1億円の判定、他の特例との併用制限、確定申告の必要性など、判断が分かれる論点は多く残ります。適用の可否は個別に税務署または税理士へ確認してください。
✓ポイント:この特例では、市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」の添付が必須です。豊島区の物件なら区役所で申請することになり、電気やガスの閉栓証明など空き家であった事実を示す書類の準備に時間を要します。売却の目処が立った段階で並行して確認を進めておくと安全です。
出典:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁
相続人自身が実家に住んでから売却する場合は、マイホームを売ったときの3,000万円特別控除が使えます。空き家特例と違い建築年月日の制限がなく、マンションでも対象になる点が特徴です。
条件は、居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること。ただし控除だけを目的とした一時的な入居は認められず、住民票の異動だけで実態が伴わなければ税務署に否認される可能性もあります。なお、空き家特例とマイホーム特例を同一の譲渡で重ねて3,000万円を超えて控除することはできません。
最後に、手戻りや損失を避けるための実務上のポイントを3つ挙げます。相続物件は通常の売却に比べ、判断を誤ったときの影響が大きくなりやすいためです。
見栄えを良くしようと先にリフォームや解体を行うのは避けたほうが無難です。かけた費用の分だけ売却価格が上がるとは限らず、回収できないケースが目立ちます。築年数の古い物件では、購入者が土地の価値を重視し、自分の計画で建て替える前提で検討することも珍しくありません。
解体には税負担の面でも注意点があります。建物を取り壊して更地にすると、翌年1月1日時点で住宅が存在しない状態となり、住宅用地の課税標準の特例が適用されず、翌年度の固定資産税・都市計画税が上がる可能性があります。空き家特例のために解体が必要な場合でも、そのタイミングは不動産会社や税理士と詰めるべき論点です。
遺品整理と境界確定は、着手が遅れると引き渡しの日程に直接響きます。どちらも業者の手配と作業に時間がかかるためです。
とくに豊島区は住宅が密集した地域が多く、隣地との境界が曖昧なまま長年経過した土地も見受けられます。境界が未確認のままだと、買主の検討、金融機関の担保評価、売買契約の条件や価格交渉に影響する場合があります。確定測量が必要かどうかは、売却前に不動産会社や土地家屋調査士へ確認しておくと判断を誤りません。
相続物件の売却は、会社選びが結果を左右します。権利関係の整理、特例に合わせたスケジュール調整、司法書士や税理士との連携など、一般的な売却にはない対応が求められるからです。確認したいのは次の点になります。
売り急ぐ事情がある場合や、近隣に知られずに売りたい場合は、不動産会社による買取という方法もあります。買取では、売買契約において売主の契約不適合責任を限定または免除する条件が設けられる場合があります。ただし自動的に免責されるわけではなく、売主が把握している不具合や権利関係は正確に告知しなければなりません。
相続した実家の売却は、遺言書の確認から相続人の確定、遺産分割協議、相続登記を経て、ようやく売却活動に入る流れをたどります。譲渡所得税や登録免許税、仲介手数料といった負担がある一方、取得費加算の特例や空き家の3,000万円特別控除を使えば税額を抑えられる場面もあります。ただし両者は併用できず、期限も制度ごとに異なります。相続開始日、取得を知った日、相続税の申告期限、売却する年の4つを並べて逆算することが、判断を誤らないための出発点です。
和幸株式会社は、豊島区池袋本町で昭和59年の創業以来、地域に根ざして不動産売買と賃貸のご提案を続けてまいりました。仲介による売却、当社での買取、相続不動産の賃貸化まで、ご事情に合わせたご提案が可能です。無料査定も承っておりますので、豊島区の相続物件でお悩みでしたらお気軽にご相談ください。